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「向いてない仕事」ですら、不安は不要だった話

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就活中、ずっと荷物運びのバイトをしていました。色んな人に助けてもらって、無事に終えられました。適性のない仕事ですら「不安は本当に不要だった」と実感した話です。【撮影地】宗谷丘陵

27年ぶりのアルバイト。自信は初日で打ちのめされる

就活中は生活費を稼ぐため、近所の会社で、荷物運びのアルバイトをしていました。このバイトには、大きな利点がありました。それはシフトが割合自由で、大抵は早く終って、早く終わってもバイト代は一緒だということ。バイト後に就活の面談を入れたり、就活対策を練る時間を持てたのです。アルバイトなんて大学4年生の時以来だから、実に27年ぶり。仕事内容は、ロッカーや机などのレンタル品を、トラックやオフィスへ移動することでした。


私は肩幅が広くがっしりした体型で、腕力には割合自信がありました。しかし、その自信は初日で粉砕されました。アルバイトの先輩達が机やロッカーを一人で軽々と運ぶのに、私は一人では運べなかったのです。彼らにコツを尋ねても、「持つモノの形から重心を見極めることかな。そのうち覚えるよ」と、今日明日には結果の出ないことばかり。よく考えてみれば、学生時代も「荷物運び」なんてやったことありませんでした。

たった数日でかなりの腰痛を発症。不安になった

しばらくは、重いモノを一人で運ぶのは先輩達に任せて、軽いモノや補助的な仕事をしていました。しかし数日もすると、「近年味わったことのない腰痛」になりました。そして朝方には、ふくらはぎが痙攣して目が覚め、脂汗が出ました。何しろ就活中ですから、ギックリ腰で動けなくなるのが一番怖いことでした。バイト先へ行くときには、毎日、ギックリ腰の不安におびえるようになりました。


一方で先輩達はとても優しく、私が机などを一人で運べなくても、イヤミなどは全く言われません。「ゆっくりでいいから確実にね」と繰り返すだけです。自分も「ゆっくり確実」がいいのですが、「自分一人だけ仕事量の少ない状態」が長時間続くと、それはそれでストレスになります。


アルバイトを始めて一ヶ月半が経ったある日、大失敗をやらかしました。

急いだら壁に穴を空けちゃった

その現場は、大量の机とロッカーを、台車でオフィス内へ運ぶというものでした。重い机とロッカーは、力持ちの先輩がトラックから降ろして台車へ載せてくれるので、私はオフィスまで台車をゴロゴロと運んでいくだけです。オフィス内で台車から机を降ろして設置するのも先輩方でした。


最初はとてもありがたいなあと思っていました。これならば腰を壊す可能性は低いからです。しかし運ぶ机の量が膨大なので、全く終わりません。その日は休日で面接などは入っていませんでしたが、このペースでやっていたら、帰るのが結構遅くなりそうでした。それに自分が楽すぎて、先輩達に申し訳ない気持ちもありました。


どこで時間がかかっているかと言えば、エレベーターでした。エレベーターの速度が遅くて、しかも狭いため、エレベーターの前に机やロッカーなどの山が出来ていたのです。時間短縮のため、台車に載せた机をエレベーターへ載せる時、折り畳みテーブルも一緒にエレベーターへ載せました。ここまではよかったのですが、降りる時にやらかしてしまいました。


そのエレベーターは、来るのが遅いくせに、ドアが閉まるのは異常に早いという、ありがちな仕様でした。だからドアが閉まる前に、台車に載せた机を急いでおろし、次に折り畳みテーブルを…と思ったら、その台車から机が倒れて壁に激突し、数センチの穴を空けてしまったのです。凄い音がしたので先輩達が駆け寄ってきて、現場はシーン。ただ先輩達は慣れっこのようで、「ああ、オレ達保険に入っているから気にしなくていいよ。でも気を付けて。急がなくていいから」と言ってくれました。あとからネチネチとイヤミを言われることも一切ありませんでした


先輩達に感謝する一方で、自分に対してはかなりの怒りが湧いてきました。

腰への不安が、「長くかかりそう」という先入観を生んだ

こう言うとき、FAP療法をやっている人は、「心に聞く」でしょう。家に帰ってリラックスをしたあとに、「心よ」と枕詞を付けて、自問自答をしてみました。


「心よ、昨日は最悪な日だったね。机を倒して壁に穴を空けちゃったし」
「そうでもないよ。アルバイトという気楽な立場で、『人々の優しさ』に触れられた」


確かに…。先輩達は私をとがめることなく、事件後も淡々と作業を進めていました。そして彼らは、作業完了後には私を先に帰した上で、現場に残って保険の手続きなどをしてくれたそうです。そもそも先輩達は「机やロッカーを台車で運ぶだけ」という、すごく楽な仕事を割り振ってくれていました。「人々の優しさ」に充分感謝していたはずなのに、どうしてこんな失敗をやらかしたのでしょうか?


「誰にも急げと言われていないのに、何でオレはあんなに急ごうとしたの?」
「机の数が大量で、いくら楽な仕事でも腰は大丈夫かという不安が生まれ、それが『帰りが遅くなるかも』とか『面倒くさそう』という先入観が生まれた」
「それで?」
「楽すぎて申し訳ないとも思っていたから、その分急ごうと思ってしまった」


確かに、いくら「机を台車で運ぶだけ」とはいっても、数が膨大で先輩も忙しいため、机から台車を下ろすことも多少はありました。それを繰り返していたら、腰が痛くなるかもという不安はありました。その不安が「今日は遅くまでかかるかも」とか「面倒だな」とか、先入観を生みました。一方で、一番楽な仕事をさせて貰ったことへの申し訳なさがありました。だからせめて、台車に載せた机と一緒に、折り畳みテーブルまで運んで効率化しようと考えました。

不安が増大したのは「昔の自分モード」だったから

さらに「心に聞く」で尋ねてみました。


「どうしてそんな気持ちになったの?」

「昔の自分モードだったってこと」


過去のイヤなことも思い出しました。以前、仕事をしていたときは解離しまくりですから、周囲から常に孤立していました。孤独感を癒すため「オレは凄いんだ」と言うことを周囲へアピールしようともがいて逆効果になっていたことを…。


「心よ、今後、オレはどうすればいい?」
「仕事前に、常にリラックスする」
「そうだね。あとは?」
「まず、不安にならない」
「あとは?」
「早く終わらせようとか思わない」
「あとは?」
「長くかかる仕事だとか、変な先入観を持たない。目の前のことに集中する 」


リベンジのチャンスは三日後に訪れました。その日は、机やロッカーの分量が「自分史上もっとも多い現場」に当たってしまいました。しかもエレベーターがなく、全て階段で運ぶ必要があります。三日前の現場よりも、腰への負担や、壁に穴を空ける可能性も格段に高い現場でした。

目の前のことに集中したら、凄く楽しくなった

まずは現場へ入る前に、何度も深呼吸をして、不安な気持ちを消しました。そして現場で大量の机やロッカーを見ても、「大変そう」とか「遅くなりそう」とか、余計な先入観は持たないように気をつけました。ともかく目の前の机とロッカーを、上の階まで無事に運ぶことだけを考えました。時々腰が痛くなって不安が湧いてきたら、「バカの一つ覚え」のように深呼吸をして、目の前のことに集中しました。


そのうち、気づいたことがあります。先輩達は、私に軽いモノを優先して割り振ってくれていたことを。例えば、ガラス付きのキャビネットとガラス無しのキャビネットならば、ガラス付きの方が重くなります。先輩達はガラス付きキャビネットを率先して運び、ガラス無しのキャビネットを私に回してくれていました。そして休憩時間も長めでした。休憩時間は大抵15分くらいですが、その日は30分近くも取られていました。私はその間、せっせと腰回りをストレッチして、疲労の蓄積を抑える事が出来ました。アルバイトだけれどいい職場だなあと、凄くいい気分になりました。


休憩時間のあと、「アングル」という物品棚の運び方を研究してみました。それまで私はアングルを両手だけで運んでいましたが、先輩達は肩に担いだり、首の後ろと両手の三点で運んでいたのです。肩に担ぐのは無理でしたので、首の後ろと両手の三点で運んでみたら、これが意外にいい! 首の後ろが痛くなるかと思ったら全く痛くならず、腕も凄く楽です。今まで大変な思いをして運んでいたモノを、楽に運べるようになるのは嬉しいことで、ますますいい気分になりました。


次は2人用ロッカーに挑戦しました。2人用ロッカーは「頑張ればなんとか一人でも大丈夫」という重さでした。この日は2人用のロッカーが大量にあって、しかも階段を使うので、全部運ぼうとすれば私の腰が確実に壊れます。しかしあまりにも大量にあるから、先輩達は「2人用ロッカー、何とか一人で運べない?」と尋ねてきます。私は先輩達に持ち方のコツを改めて尋ねましたが、さすがに2人用ロッカーは階段でフラフラして厳しいことが分かりました。すると長老の先輩が、「じゃあ、2人用ロッカー2個を2人で運んでみる?」と言い出しました。確かに、2人用ロッカー2個を2人で運べば、1人で1個運んだのと計算上は一緒です。しかし、1人では辛いモノを2人だからといって、2個運べるモノでしょうか?


試してみると、これが案外簡単でした。私が先頭になってロッカーを後ろ手で持ち、先輩が後ろでロッカーを支えます。そして電車ゴッコのように、私・ロッカー・先輩が一列となって階段を上っていくのです。

案外楽な理由は、階段を上る時に先輩の方へ重心がかかるからだと思っていました。しかし私が後ろになってみても、それほど大変じゃありません。つまり、私が2人用ロッカーを一人で持てないのは、持ち方が悪いだけで、2人用ロッカーの重量そのものは、腰が壊れない程度だったのです。


そんなワケで、私と先輩が電車ゴッコ形式で2人用ロッカーをどんどん上の階へ運びました。1人では難しいモノも、2人ならとても楽…。何かの人生訓のようだなと、ますますいい気分になりました。気づくと、一日が終わっていました。

共有サンダルにまで感謝したくなった

今思い返しても、本当に不思議な一日でした。あれだけ膨大な机やロッカーを運んだのに、全く長く感じられませんでした。かといって何も覚えていないわけでなく、中身が猛烈に詰まった一日です。「アングル」という物品棚を楽に持てるようになり、2人用ロッカーを「2人で2個運ぶ」作戦を先輩に教えてもらいました。先輩達の優しさも充分に感じ、心の底から感謝の気持ちが湧いてきました。


その現場はトイレが外にあり、ぬかるんだ土の先にトイレがありました。そのトイレへ行くために、共有サンダルが用意されていました。その共有サンダルにまで「ありがとう」と言いたくなるくらい、とても気持ちのいい日でした。その日、家に帰ってバランスログを書いたら、もちろんバランスログの「快不快」は、満点の「4」でした。


壁に穴を空けた現場より、こちらの方がうんと大変だったのに、なぜこんな心境になったのか、改めて考えてみたくなりました。

今ここに集中することこそ、自分を最大限に表現すること

早速家に帰ってリラックス後、FAP療法の「心に聞く」をやってみました。


「心よ、昨日は目の前の一瞬一瞬に集中していたら、あの大量の荷揚げでも苦痛にならなかったね? 腰も大丈夫だったし」
「そうだね」
「心よ、不安なんて本当に不要な感覚だよね。早く終わらせたいとか、先入観も不要だよね」
「そうだね」
「オレはこの仕事に向いていないのに、ここにいても良くて、先輩達も優しくしてくれるんだから、いい職場だよね」


昨日の出来事は、解離しまくりの「過去の自分」からすると、考えられないくらい素敵な出来事でした。解離しまくりの頃は、「自分は戦力になっているから周囲に受け入れられている」と思い込んでいたからです。だから「オレは凄いでしょ」とアピールし続けて無理を重ね、解離が酷くなったのです。しかし昨日の自分は、戦力として大して役に立っていないにも関わらず、周囲の人が自分に配慮をしてくれて、色々と手助けもしてくれます。その優しさが伝わってきて、心の奥底が暖かくなりました。


一方で、持ち方を色々工夫することで、無理せず結果を出す方法を見つけました。そして自分だけでは運べないモノは、先輩に相談して試行錯誤することで、双方が納得する答えを出せました。ついでに「心よ」で聞いてみました。


「心よ、オレって、みんなに嫌われたりしていないの?」
「別に。遅刻したりドタキャンしたりしないから、戦力として考えやすいんじゃない? 自分が仕事を振る側の立場だったらどう?」
「力持ちだけど遅刻するヤツより、力はなくても遅刻しないヤツがいいね」
「力があっても、細かい仕事が苦手な人もいるしね」
「そりゃあね。今ここに集中することこそ、自分を表現する最大の方法だからね」


「それを分からせるために、このバイトを始めたの?」
「そりゃあそうでしょ。ヒントを得たんじゃない?」


「心に聞く」が面白いのは、自問自答なのに意外な答えが返ってくることです。この時も思わず納得してしまいました。


現場で働いているのはアルバイトが大半で、遅刻は当たり前。この日の現場は5人いましたが、集合時間より前に現場へ着いていたのは自分一人(笑)。最後の人が来たのは、集合時間の15分もあとでした。そして帰り際に先輩へ聞いたら、「細かい作業より、ロッカーとか運ぶ方が好き」という人は結構います。私は力がないので、細かい作業の方が圧倒的に好きですが、そう言う人ばかりではないのです。現場で仕事がスムースに進むためには、どちらのタイプの人間も必要というわけです。


適性のない職場ですら、ありのままの自分でも、みんなは自分を受け入れてくれるんだね…。


腰は大丈夫かなんて、不安は不要。適性があるとかないとか、好きとか嫌いとか、先入観も不要。不安や先入観を感じるくらいなら、無心で目の前のことを淡々とこなす。そうすると楽しくて充実する。本当に不安なんて不要だった…。もっと言えば、適性があるかないかという先入観すら不要だった…。


それを実感した一日でした。

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